中学社会の公民で学習する「天皇の国事行為」。
国会の召集や衆議院の解散、社会権、内閣総理大臣の任命など、たくさんの種類の国事行為が出てくるため、全部を覚えきれない中学生も多いと思います。
今回は天皇の国事行為について、1つ1つを簡潔で分かりやすく説明して、さらにゴロ合わせによる覚え方も紹介していきます。
この記事でお教えする内容は、以下の通りです。
①『国事行為』ってなに?
天皇の国事行為についての解説の前に、まず日本国憲法における『天皇』の位置づけについて、カンタンに説明しておきたいと思います。
大日本帝国憲法において天皇は主権者でした。
一方、現行の日本国憲法では、天皇は主権者ではなく日本国と国民全体の「象徴」であり、その地位は主権者である国民全体の意思にもとづくと規定されています。
日本国憲法での天皇の位置づけがどのようなものか分かったところで、天皇の国事行為とは何かについて説明していきたいと思います。
日本国憲法のもとでは、天皇は政治に関する権限を持っていません。
ただ天皇は憲法に定められた、形式的・儀礼的な行為である『国事行為』を行うことができます。
後で詳しく説明しますが、国事行為の具体例としては、
・国会の召集
・衆議院の解散
・内閣総理大臣の任命
・栄典の授与
:
などが挙げられます。
天皇はこれらの行為を、内閣の助言と承認のもとに行うことができます。
まとめますと、国事行為とは、
天皇が内閣の助言と承認のもとに行う形式的・儀礼的な行為のこと
ということになります。
特に『内閣の助言と承認』という語句は、テストでよく出題されますので、しっかり覚えておきましょう!
② 覚えておくべき国事行為を解説
ここからは『国事行為』の具体的な中身について、詳しく解説していきますね。
国事行為の中でも、覚えておくべき↓の6つについて説明していきたいと思います。
① 国会の召集
② 衆議院の解散
③ 最高裁判所長官の任命
④ 内閣総理大臣の任命
⑤ 法律などの公布
⑥ 栄典の授与
(ⅰ) 国会の召集
国会は衆議院と参議院からなり、各議院で国民の代表である国会議員が話し合い様々な取り決めを行っています。
また国会には状況や目的によって、通常会・臨時会・特別会の種類があります。
これら国会の会期を開始させる行為、より詳しく言うと衆議員・参議院の議員を国会に参集させて、国会を活動可能な状態にさせる行為が『国会の召集』になります。
この『国会の召集』は、内閣が決定し、詔書(天皇の意思を明示した公文書)が公布されることによって行われます。(※詔書は「しょうしょ」と読みます)
ポイントは、内閣が国会の召集を決定し、その内閣の助言と承認にもとづき、形式的・儀礼的に天皇が詔書を出している点です。
天皇の意思で国会の召集を決めることはできない点を、しっかり押さえておきましょう。
(ⅱ) 衆議院の解散
衆議院は参議院とちがい、解散される場合があります。
解散とは、たとえ任期(衆議院議員は4年)が残っていても、全衆議院議員に対し一斉に議員の資格を失わせることです。
衆議院の解散は、内閣が国の政治上重要なことがらについて、国民の意思を確かめる目的で行われます。
解散が行われた後は、40日以内に衆議院議員総選挙が行われ、国民によって新たに衆議院議員が選ばれます。
『衆議院の解散』は、内閣が決定し、詔書(天皇の意思を明示した公文書)が公布されることによって行われます。
国会の召集と同様、内閣が衆議院の解散を決定し、その内閣の助言と承認にもとづき、形式的・儀礼的に天皇が詔書を出している点を押さえておきましょう。
天皇の意思で衆議院の解散を決めているわけではない点を、しっかり押さえておきましょう。
(ⅲ) 最高裁判所長官の任命
最高裁判所とは、日本の裁判所の最高機関のことです。
この最高裁判所の長官は、内閣が指名します。
そして、内閣の指名にもとづき、天皇が最高裁判所長官を任命します。
天皇の意思で最高裁判所長官を決めているわけではなく、内閣が指名した者を天皇が形式的・儀礼的に任命している点を押さえておきましょう。
(ⅳ) 内閣総理大臣の任命
内閣総理大臣は、国会によって指名されます。
具体的には、国会で国会議員の中から投票によって選ばれます。
そして、その国会の指名にもとづき、天皇が内閣総理大臣を任命します。
最高裁判所長官と同様、天皇の意思で内閣総理大臣を決めているわけではなく、国会が指名した者を天皇が形式的・儀礼的に任命している点を押さえておきましょう。
(ⅴ) 法律などの公布
法律は国会で成立し、その後、成立した法律は天皇によって公布されます。
公布とは『成立した法令や条約を広く一般国民に知らせるために公示すること』です。
また、公布書には天皇が署名した後、天皇の印鑑である御璽(ぎょじ)が押印されます。
ここで取り上げた法律以外にも、憲法改正・政令・条約などの公布も国事行為として行われます。
(ⅵ) 栄典の授与
栄典とは、国家や社会に対して大きな功績があった個人に対して,国が表彰するために与える栄誉のことです。
日本では年に2回、春と秋に、各分野で功績があった個人に叙勲や文化勲章などが授与されます。
栄典の授与も、内閣の助言と承認にもとづき、天皇が形式的・儀礼的に行います。
③ 覚えておくべき国事行為のゴロ合わせ
それでは、ここまで解説してきた国事行為の種類を覚えるゴロ合わせを紹介しますね。
それは、
『紹介する2名は最高の内科』
『光栄です!』
です。
2人の内科医が最高の内科医だと紹介されて、光栄に思って照れているところをイメージして覚えて下さいね。
ゴロ合わせの内訳はそれぞれ↓の通りです。
・紹(しょう)→ 国会の召集
・介(かい)→ 衆議院の解散
・2名(にめい)→ 任命
・最高→ 最高裁判所長官
・内科→ 内閣総理大臣
・光(こう)→ 法律などの公布
・栄(えい)→ 栄典の授与
※YouTubeに「天皇の国事行為」についてのゴロ合わせ動画を投稿していますので、↓のリンクからご覧下さい!
④ 国事行為の練習問題にチャレンジ!
それでは最後に、ここまで学習してきた国事行為についての練習問題にチャレンジして、理解度をチェックしましょう!
【問】(ア)~(カ)から天皇の国事行為であるものをすべて選びましょう。
(ア) 国会の召集
(イ) 条約締結の承認
(ウ) 法律の制定
(エ) 内閣総理大臣の指名
(オ) 衆議院の解散
(カ) 最高裁判所長官の任命
解答解説は↓の通りです。
(ア)の『国会の召集』は天皇の国事行為です。
(イ)の『条約締結の承認』は国会の仕事です。
(ウ)の『法律の制定』は国会の仕事です。
(エ)の『内閣総理大臣の指名』は国会の仕事です。
(オ)の『衆議院の解散』は天皇の国事行為です。
(カ)の『最高裁判所長官の任命』は天皇の国事行為です。
よって、正解は(ア)(オ)(カ)になります。
記事のまとめ
以上、中3公民で学習する「天皇の国事行為」について、解説と覚え方を詳しく紹介してきました。
いかがだったでしょうか?
今回の記事のポイントをまとめると…
①『国事行為』とは
⇒ 天皇が内閣の助言と承認のもとに行う、形式的・儀礼的な行為のこと
・介→ 衆議院の解散
・2名→ 任命
・最高→ 最高裁長官
・内科→ 内閣総理大臣
・光→ 法律などの公布
・栄→ 栄典の授与
今回も最後まで、たけのこ塾のブログ記事をご覧いただきまして、誠にありがとうございました。
これからも、中学生のみなさんに役立つ記事をアップしていきますので、何卒、よろしくお願いします。
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