古文の内容を読み取ることが苦手な中学生は、少なくないと思います。
そこで今回の記事では、中学生が「古文」を勉強するうえで知っておきたいポイントを6つ、紹介していきたいと思います。
古文の勉強のやり方や、中学生でも知っておいた方がいい古典文法の基礎知識を紹介していますので、ぜひご覧ください。
◎今回の内容は、以下の通りです。
➀古文は省略が多い
中学生が古文を読んでいて内容がわからなくなる原因の1つに、古文には省略が多いことが挙げられます。
ここでは、「主語」と「助詞」の省略について詳しく説明していきたいと思います。
主語が省略される場合が多い
古文では、人名や登場人物を示す言葉は、最初に書かれた後は省略して書かれない場合が多いです。
よって、文を読んでいても述語の主語が書かれていないため、誰が何をしているの分かりづらくなってしまうのです。
では、どうすれば主語をつかむことができるのでしょうか?
私は生徒には「古文で人名や人を示す言葉がでてきたら、まるで囲みましょう!」と指導しています。
そうすることで、登場人物の読み落としを防ぐことができるし、省略されていてる主語の見当もつけやすくなります。
助詞の省略にも注意
続いて、助詞の省略について詳しく見ていきましょう。
そもそも「助詞」とは何か?
助詞を説明するために、1つ例文を挙げたいと思います。
・私は、学校で国語を勉強します。
例文の中の太字で表した「は」「で」「を」の箇所が、助詞です。
もし、この例文で助詞が無かったらどうなるでしょう。
・私、学校国語勉強します。
意味が全く分からないわけではないのですが、主語や修飾語が分かりづらい文になってしまいました。
古文では、このように助詞が省略されていることが多いのです。
では次に古文の例文を挙げてみましょう。
・光源氏、笛吹きたり。
(光源氏が笛を吹いた。)
主語や修飾語が分かりにくく感じると思います。
そこで、この例文に助詞を補った文を挙げてみます。
・光源氏が、笛を吹きたり。
これならば、主語や修飾語が把握でき、意味も分かりやすくなったと思います。
このように、古文を読むのに慣れるまで助詞を補いながら読むと、内容がつかみやすくなります。
②話の教訓やオチを読み取る
高校入試などに出題される古文には、教訓やオチがある場合が多いです。
そして、その教訓やオチをきちんと読み取れているかを問う問題がよく出されます。
教訓の例として、
「他人には親切にした方がよい」
「欲張ってはいけない」
「ズルをせず、努力することが大切である」
など昔話のテーマになることが多い内容が挙げられるでしょう。
オチの例では、一休さんのとんち話を挙げることができます。
一休さんが橋を渡ろうとしたら「この橋渡るべからず」という立札が立ってい
たので、橋の真ん中を歩いてわたりました。
「立札を見なかったのか?」と問われると、
「端(はし)ではなく、真ん中を渡ってきました。」
と答えたという、有名なとんち話があります。
このように、話の最後にオチがつくものもよく出題されます。
話の教訓やオチをつかむのが苦手な中学生は、子ども向けの昔話やとんち話などを読み返して、話のパターンに慣れておくとよいでしょう。
➂慣れないうちは古文を音読する
古文が苦手な中学生の多くが、音読するとスラスラと読むことができません。
古文は日本語で書かれてはいますが、現代文とは文体が異なる部分が多いです。
そのため、スムーズに読み進めることは難しいのです。
ではどうすれば、古文をスムーズに読み進めることができるのでしょうか?
古文に限らず、誰しも幼い頃に文章を音読することで、少しずつ読み取る力をつけてきました。
古文の場合も、それと同様です。
たどたどしく国語の教科書を音読していた頃を思い出し、古文に慣れるまで可能な限り音読をしましょう。
そうすることで、少しずつ古文を読み取る力もついてきます。
歴史的かなづかいに注意!
古文を音読するうえで注意が必要なのが、歴史的かなづかいの読み方です。
歴史的かなづかいとは、古文で使われているかなづかいのことです。
ここでは、基本的な歴史的かなづかいについて紹介しておきます。
(1)「は・ひ・ふ・へ・ほ」
古文では「は・ひ・ふ・へ・ほ」を「わ・い・う・え・お」と読みます。
いくつか例を挙げておきます。
・あはれ → あわれ
・にほひ → におい
(2)「ぢ・づ」
古文では「ぢ・づ」を「じ・ず」と読みます。
いくつか例を挙げておきます。
・よろづ → よろず
・はぢ → はじ
(3)「む」と「ゐ・ゑ・を」
古文では「む」を「ん」、「ゐ・ゑ・を」を「い・え・お」
いくつか例を挙げておきます。
・ゐなか → いなか
・をとこ→ おとこ
↑に挙げた、基本的な歴史的かなづかい以外にも、以下のようなものもあります。
〇「くわ・ぐわ」→「が・か」
(例) ぐわんじつ → がんじつ
くわし → かし
〇「au」→「ou」
(例) まうす(mausu) → もうす(mousu)
やうやう(yauyau)→ようよう(youyou)
※歴史的かなづかいをもっと詳しく知りたい方は、YouTubeにアップしている↓のリンク先の動画をご覧下さい!
④古文における疑問の表現
ここでは古文における疑問の表現について、よく出てくる2つのパターンを紹介したいと思います。
「や」と「か」を用いる疑問の表現
文に、「や」や「か」を付け加えることで、疑問の文にすることができます。
詳しく説明するため、まず普通の文を例に挙げます。
・昔、男ありけり。
(昔、男がいた。)
次に、「や」「か」を付け加えた疑問の文を例に挙げます。
・昔、男ありけるや。
(昔、男がいたのだろうか。)
・昔、男ありけるか。
(昔、男がいたのだろうか。)
さらに、文中に「や」「か」を付け加えた疑問の文を例に挙げます。
・昔、男やありける。
(昔、男がいたのだろうか。)
・昔、男かありける。
(昔、男がいたのだろうか。)
文末に「や」「か」が付いた疑問文は、分かりやすいと思います。
しかし、文中に「や」「か」が付いた疑問文は分かりにくいので注意しましょう。
もし、文中に「や」「か」が付いている場合、文末に「や」「か」を付けなおして読むと、意味が把握しやすくなります。
また、係りの語「や」「か」が使われた場合、結びの語(この文の場合は「けり」)は連体形(この文の場合は「ける」)になります。
「いか~」を用いる疑問の表現
「いか」「いかに」「いかが」「いかで」など、「いか~」で始まることばが使われている場合は、「どう~?」という意味に把握しましょう。
現在でも、次のような表現が使われていますよね。
「いかがいたしましょう?(どうしましょう?)」
「この結末はいかに?(この結末はどうなる?)」
それでは、いくつか例文を挙げてみましょう。
・大臣、いかならむ。
(大臣は、どうであろうか?)
・いかでさることするぞ。
(どうして、そのようなことをするのか?)
※ここまでの①~➃の内容をまとめた動画を、「古文の読解問題①」としてYouTubeにアップしていますので、↓のリンクからご覧下さい!
⑤打消しの助動詞について
中学生が古文を読むとき、意味を取り違えてしまう一番の原因が、打消しの助動詞を正確に理解していないことにあります。
打消しの助動詞をきちんと理解することができれば、古文を読み解くことがかなり楽になります。
ここでは、紛らわしい3つの助動詞について詳しく説明しますので、確実に理解しておきましょう。
助動詞「む」について
古文では、助動詞「む」が「ん」で書かれていることが多いです。
そのことに注意して、次の文の意味を考えてみましょう。
➀こころもとなく思わん。
②おぼつかなきこと尋ねん。
ちなみに、「こころもとなし」は「不安だ」という意味、「おぼつかなし」は「はっきりしない」という意味です。
①を「不安に思わない」
②を「はっきりしないことを尋ねない」
このように思った人は、残念ながらそれは間違いになります。
なぜなら、助動詞「む(ん)」は推量(~だろう)・意志(~しよう)を意味する助動詞だからです。
よって、
①は「不安に思うだろう」
②は「はっきりしないことを尋ねよう」
というのが正解になります。
「む(ん)」を打消しの助動詞(~ない)と思っていると、本当の意味と逆の意味に解釈してしまうので、注意しましょう!
助動詞「ず」について
ここで説明する助動詞「ず」こそが、打消しの助動詞(~ない)です。
まず1つ例文を挙げましょう。
・雪にてあまたのふみ届かず。
「あまた」は「多くの」という意味、「ふみ」は「手紙」という意味です。
よってこの例文の意味は、「雪で多くの手紙が届かない」になります。
助動詞「ず」について、注意しておくことがあります。
それは、助動詞「ず」が名詞にくっつくとき、「ぬ」に変わる(活用する)ことです。
1つ例文を挙げると、
・ふみ届かぬ日あり。
(手紙が届かない日がある。)
この太字で書かれた「ぬ」はもともと「ず」なのですが、その後に名詞「日」がくっついているため、「ず」が活用して「ぬ」になったのです。
助動詞「ぬ」について
最後に、助動詞「ぬ」について説明していきます。
助動詞「ぬ」は完了の助動詞で「~した」という意味になります。
1つ例文を挙げると
・花、いみじう咲きぬ。
(花がたいそう咲いた。)
助動詞「ぬ」で注意が必要なことは、先ほど説明した打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」との違いについてです。
1つ例を挙げてみます。
①花咲かぬ春
②花咲きぬ春
➀と②の違いが分かるでしょうか?
①の「ぬ」が打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」なので、意味は「花が咲かない春」になります。
②の「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」なので、意味は「花が咲いた春」になります。
◎ここで2つの「ぬ」の見分け方を紹介しましょう。
・未然形(ズ・ナイにつく形)+「ぬ」
→打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」
・連用形(ケリにつく形)+「ぬ」
→完了の助動詞「ぬ」
先ほどの例文だと、①は「咲く」が「ズ・ナイ(咲かず・咲かない)」にくっつく形「咲か」に活用して「ぬ」にくっついています。
よって、この「ぬ」は打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」であることがわかります。
同様に②は「咲く」が「ケリ(咲きけり)」にくっつく形「咲き」に活用して「ぬ」にくっついています。
よって、この「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」であることがわかります。
最後に練習問題を1つやってみましょう。
「ぬ」に注意して、次の文の意味を読み取りましょう。
①ふみ届かぬ日
②ふみ届きぬ日
①は「届く」が「ズ・ナイ(届かず・届かない)」にくっつく形「届か」に活用して「ぬ」にくっついています。
この「ぬ」は打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」であることがわかります。
よって➀の意味は、「手紙が届かない日」になります。
②は「届く」が「ケリ(届きけり)」にくっつく形「届き」に活用して「ぬ」にくっついています。
この「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」であることがわかります。
よって②の意味は、「手紙が届いた日」になります。
※ここで解説した内容をまとめた動画を、「古文の読解問題②」としてYouTubeにアップしていますので、↓のリンクからご覧下さい!
⑥現代と意味が異なる古文単語
古文を読むとき、意味をつかむのが難しい理由の一つが、現代と意味が異なる単語が使われていることです。
↓に現代と意味が異なる古文単語をいくつか挙げておきますので、しっかり覚えておきましょう。
『あした』… 朝
『あはれ』… 趣がある
『あやし』
①不思議だ ②身分が低い
『ありがたし』… めったにない
『おとなし 』
①分別がある ②大人びている
『としごろ』… 長年・数年
『なかなか 』
①中途半端だ ②むしろ・かえって
『ながむ』… 物思いにふける
『ねんず』
①祈る ②我慢する
『ののしる』… 大声で騒ぐ
『やがて』
①そのまま ②すぐに
『をかし』… 趣深い
※古文単語をもっと詳しく知りたい方は、YouTubeにアップしている↓のリンク先の動画をご覧下さい!
記事のまとめ
以上、古文の勉強のポイントについて、6つのポイントを詳しく見てきました。
いかがだったでしょうか?
◎最後にもう1度、記事の中でのポイントをまとめてておくと…
・主語が省略されることが多いので、人名等はマルで囲んでチェックしておく
・助詞が省略されると主語・修飾語が分かりにくいので、助詞を補って読む。
・古文は教訓やオチがあるものが多いので、話のパターンに慣れておく。
・古文が苦手な人は、古文に慣れるまで音読する。
・文中・文末に「や」「か」が付け加わると、疑問の文になる。
・「いかが」など、「いか~」で始まることばがある文は、疑問の文になる。
・助動詞「む(ん)」は打消しの助動詞ではないので、注意する。
・完了の助動詞「ぬ」と打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」の違いに注意する。
・未然形(ズ・ナイにくっつく形)+「ぬ」
→「~ない」の意味
・連用形(ケリにくっつく形)+「ぬ」
→「~た」の意味
最後になりましたが、もっと詳しく古文を勉強したい人に、中学生向けでおすすめな古文の参考書・問題集を紹介しますので、興味があったらぜひご覧ください。
1冊目は「くもんの高校入試スタートドリルこわくない国語古文・漢文」です。
高校入試の古文問題の対策をしたい人にとって、はじめの一歩としておすすめの一冊です。
古文分野における定番の問題集であり、易しめの問題で古文の読解を勉強することができます。
つづいて2冊目は「高校入試 とってもすっきり古文漢文」です。
Amazonでの評価も高く、高校入試の古文対策にピッタリの一冊です。
最後に3冊目として紹介するのは「高校入試合格へのベストアプローチ 古文」です。
この本は、古典文法の内容を中学生にもわかるように、わかりやすく解説しているのですが、残念ながら絶版となっています。
Amazonで中古本として出品されているようなので、興味がある人はぜひご覧下さい。
古文が苦手な高校生にも役立つ本だと思います。
今回も最後まで、たけのこ塾のブログ記事をご覧いただきまして、誠にありがとうございました。
次回は、国語の勉強のやり方や作文のポイントを、記事としてアップしていきます。
これからも、中学生のみなさんに役立つ記事をアップしていきますので、何卒よろしくお願いします。
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